2)祖母の通夜で視たもの

母は6番目の子供の私を産むと、産褥の床に臥せた儘半年後に亡くなったそうで

す。 その後長姉と赤子の私は山陰の祖父母に預けられ、広い屋敷で何不自由な

く育てられました。

山陰にに嫁した姉と違って勉強が嫌いで遊ぶのが好きな私が12歳の時、(敗戦で

終わった) 戦後1年ほどたっていたでしょうか?、 可愛がってくれた祖母が突

然亡くなりました。 心臓発作だったようで、朝起きる隣の床の中で息絶えてい

たのです。

それから大騒ぎで親戚が呼ばれ、涙も沸かない儘に座敷の襖が玄関から茶の間

迄取り払われて、幕を張った奥の客間に祖母の棺が据えられました。

その晩お通夜が営まれ、身内の何人かが客間に残って夜を明かします。私は隣の

寝室で従姉妹と同じ布団で眠る事となり、祖母の事を茫然と思いながら、

いつの間にか眠ってしまいました。  どれくらい経ったのでしょうか、

ふと目覚めた私は祖母の通夜を思い隣室客間の様子に耳を澄ませました。

なんの物音もしません。 確か何人か居る筈なのに、 草木も眠る丑三つ時でし

ょうか、 空気も動かないシジマの中。 皆はどうしたのか?。

従姉妹の向こう側に客間の襖があります、彼女が邪魔で襖を開けられませんン。

暫らくじっとしたままでしたが、余りにも静かなため、起きてみようか、と思い

ながらそっと首をもたげて部屋の入口のほうを見ようとしました。

その時仰天!、

暗がりで、私の枕元に立つ黒い人の姿。

右手に鉄の杖、を持ち,左手胸のあたりに何か持った人が両脇に子供を連れて私

の目の前に立つのが映りました。

(お祖母ちゃんがお別れに来た)、と思った私。

祖母は双子を産んだけど、その二人は亡くなった、と聞いていたので、死んだ祖

母が子供たちに会い、二人を連れて現れたのだと思いましたが、

怖さが先で布団に潜り込み、「起きて!、起きて!」と念じながら従姉妹を抓り

ましたが、起きません。

暫らく齧りついていた従姉妹から目を上げて枕元を見ました。

もう誰もいません。

でもあの姿は今でもハッキリと目に残っていて、特に印象的だったのはあの杖。

どこかで見たことがあります。

山裾の庵に住む尼さんが持っていた杖に似てる。と思いましたがその【杖】をあ

る時又見て驚くことになるとは~。

祖母の葬儀は滞りなく終わり、奥津城が山の上の墓地に立てられました。


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