3)三男坊の兄の死

22歳になった時、長兄に誘われて、

池上本門寺の近くに間借りをする事になりました。

大通りに面した古い一軒家の広い部屋。

押入れの上段が私のお気に入りベットです。

長兄がパイロットなので帰宅時間がマチマチ、

一人で居る事が多かったこの部屋に、

建築会社で働く三男坊の兄が転がり込んで来ました。

お酒に誘われることが多くて、飲み屋通いで体を壊したとか、

建築会社を辞めて、他に勤めた。

就いては、暫く同居させて、と言う頼みをすんなりOKして、

翌日から引っ越して来たのですけれど~、

新しい会社に行き始めてから半月ばかり、

風邪をひいたらしく熱が出て、帰宅したら寝て居ました。

「熱が有ったら入ってはいけない温泉に入った」と言います。

一軒置いた隣がお風呂屋さんで、温泉です。

池上の大通り。

入口左のガラスに 「熱が有る人は、入ったらいけません』と書いて有りました。

翌朝 「お医者さんに行ってくる」 と言って出掛け、其の儘入院。

一週間ほどして退院した日に、知り合いの所に行って来たようです。

退院で寄り道をした兄は、

勧められて、禁止のお酒を飲んだのか?

お向かいの部屋の奥さんから電話が入りました。

兄がトイレで大出血、

来ていた浴衣を脱いで血を拭き、倒れた、と。

吃驚して急いで帰宅したら、

お医者様と看護婦さん・

寝ていた兄に、次兄が付き添って居ました。

輸血をする用意中、

待っている時間が流れる中で、兄の首がコトンと枕から外れました。

「ご臨終です」 と、お医者様の声。

未だ25歳の早すぎる死。

兄の遺体は実家に帰り、お棺の中に。

葬儀屋さんが胸に刀、 草鞋が足元に置かれ、

片手に置かれた 【杖】 を凝視しました。

祖母が亡くなった通夜の夜中、

私の枕元に 『立って居た人』 が持っていた 【杖】 です。

【錫杖】

(此の 【杖】 は亡くなった人が旅路に向かう時に持つ 【杖】 なのだ)

その時、単純にそう思いました。

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